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国内外の漫画を読んでレビューを書くウェブログ

2012年のウェブコミックを振り返る

去年読んだウェブコミックのタイトルを挙げ印象に残った作品を一つ選んだ。実際にはこれ以外にもいくつか読んでるけれども、あえておもしろかったと紹介することが出来ないものを挙げても仕方がないと思うので割愛。

一般のウェブコミック

去年のベストを挙げるならこれ。

Hark A Vagrant!
Mother's Day

文末のテキストリンクから画像へアクセスできる。理解のある両親を持った著者ならではのネタ。実話系のウェブコミックはこういった家庭環境の強みが圧倒的に活きる。

ケイト・ビートンはTwitpicでも日常生活にちなんだコミックをちょくちょく描いている。インターネット上のコミュニケーションの齟齬をモチーフにしたコミックなどこの作者ならではのノリだ。

What Fresh Hell Is This
Fearsome Dragon

低俗で下劣なネタを好き放題描いているのがいい。掲載に基準が設けられているGocomicsなどではこの手のネタは決して読めない。

American Elf
The Snow Blew Fiercely

残念ながら去年の掲載分にはこれといって気に入ったものがなかったので、代わりにお気に入りの4年前のものを。もっとも、毎日更新をチェックしていたわけじゃないが。作者はたまにこういう詩的な感性に訴えるものをさらっとコミックにすることがあって、この手のネタを僕は大いに気に入っていた。去年の末で更新が終了したので、もう今くらいしか言及する機会がないだろうと思ってあえて挙げてみた。

ガールフレンドの自殺未遂を描いたマーク・エラビーといい、奥さんの流産を描いた、というか成り行き上描かざるをえなかったこの作者といい、ほぼリアルタイムで出来事が作品に反映されるタイプの実話系ウェブコミックにはアクシデントが付きもの。別にアクシデントを期待して読んでいるわけじゃないが、純然たるフィクションだったならば大しておもしろくないネタでも、実際に人間がこの現実を生きているんだと思うと妙に惹かれてしまう魅力がある。

YOU'RE ALL JUST JEALOUS OF MY JETPACK
An E-reader Arrives on the Kitchen Shelf...

紙の本で近々刊行がが予定されているウェブコミック。この著者が去年出した Goliath は聖書に疎い僕には正直よくわからなかったけど、これはそれなりに楽しめる本になるんじゃないかと思う。

僕が読むウェブコミックは、多くのコミックストリップがそうであるように原則的にブラウザで表示される一つのページに収まるような短いものに限られている。 Delilah Dirk and the Turkish Lieutenant2D Goggles などは絵柄が好みでおもしろそうに見えるけれども、クリックして延々とページをめくっていくという作業がかったるくてなかなか読む気になれない。紙の本で出してくれればすぐにでも買って読むんだが。

Gocomics掲載作品

GoComicsに載っている作品をウェブコミックと呼ぶのは妙な感じがするかもしれないが、僕にとっては基本的にウェブでしか読まない作品群なので、まあすべてウェブコミックということになる。更新されたコミックストリップを一本ずつ読むのが僕にとって毎日のささやかな楽しみ。タダでこれだけ読めるんだからありがたいことこの上ない。列挙はあくまでアルファベット順。

Berger & Wyse
10月17日掲載分

食品などの無生物を擬人化したネタをよくやるコミック。まあまあ気に入っている。

Big Nate
12月19日掲載分

この時期あちこちで見られる定番のクリスマスプレゼントネタ。小学生が主人公のほかのコミックストリップがどうだかは知らないが、コメント欄を見るにつけ、この作品はどうも主人公と同じ世代の子供たちに実際によく読まれているように思える。

Calvin & Hobbes
9月14日掲載分

連載はとうの昔に終了している再掲載もの。僕が Calvin & Hobbes を読み始めて驚いたのは、この手のユーモアがとっくの昔に描かれていたということだ。すなわち、一見澄ました顔つきのキャラクターがコンテクストから外れてマニアックな、あるいはどぎついセリフを吐いて周囲の人間を呆れさせるといった類のユーモアは日本の近年の四コマ漫画でさんざんやられていて、僕はそういうひねくれたユーモアをおもしろがるのは日本人だけなんじゃないかと思っていた。

これまで僕の知る限り、いちばんおもしろいコミックストリップといえばこの Calvin & Hobbes であり、無人島に持っていく漫画を一つ選べといわれたら The Complete Calvin & Hobbes にするつもりだ。まあ、まだ買ってないんだけど。

Cul de Sac
12月16日掲載分

去年連載が終了したコミックストリップ。もうこの頃には既に以前の作品の再掲載に移行していたらしい。昨年はおもしろかったものが多くどれを挙げようか迷ったが、あえて家族総出のものを選んでみた。

For Better or For Worse
3月18日掲載分

再掲載もの。この夫婦の関係を象徴するようなコミック。子供が二人いるけれども、奥さんのほうは少しロマンティックというか、少女趣味というか、世間一般的に期待されるような年相応の割り切った主婦になれていない部分があって、そこを暢気な旦那に裏切られるというユーモアが気に入っている。

Garfield
10月31日掲載分

僕はもともとガーフィールドが読みたくてGoComicsを巡回するようになったんだけれども、さすがにマンネリを感じずにはいられない。ガーフィールドの大喰らいやジョンのダメ男振りのネタなどはもううんざりしておもしろくも何ともない。今でもおもしろく思えるのは、この手の名もない無生物を擬人化した意外性のあるネタか、猛犬注意の立て札のネタでよくやるように、同様の形式のコミックストリップを繰り返すことによって一種の溜めを作り、おかしさを増幅させるセルフパロディ的なものに限られている。

Luann
4月2日掲載分

連綿と続くよく出来たストーリー漫画のようにたびたび引きを作るので続きを読まずにはいられない作品。コミックストリップでこれだけしょっちゅう引きをうまく用意するのは珍しいんじゃないだろうか。もっとも、類型的なわかりやすいキャラクターばかり登場するし、通俗的な人間関係の対立ばかり描いているという短所を持つ作品でもあるけれども。上記の婚約の話のネタはいきなりこれだけ読んでもおもしろさがわかりにくいかもしれない。ブラッドは親友のTJから薦められたプロポーズのアイデアを馬鹿げているとしてその場では一蹴しておきながら、結局はそのアイデアにすがってしまったということがこの時点でわかるようになっている。

Maria's Day
8月7日掲載分

Calvin & Hobbes のカルヴィンを女の子にしたようなキャラクターが主人公のコミックストリップ。作者コンビはこれに先立って Working Daze という作品も連載しているけれども、デフォルメされたキャラクターデザインといい、白黒の簡素な描き込み具合といい、むしろこちらのほうがしっくりとして作風が完成しているように感じられる。

Non Sequitur
12月23日掲載分

計算高くひねくれた女の子とその家族が登場する一連の漫画と、その一家の父親が通う寂れた食堂の常連客が中心となる漫画、さらにレギュラーメンバーがまったく出ないアメリカの議会政治や社会の問題を反映した時事風刺的な一コマ漫画、および伝統的な無人島漫画のたぐいが代わる代わる掲載されるような変わった感じのコミックストリップ。正直言ってアメリカに住んでいるわけでもない僕にはよくわからないネタが圧倒的に多い。上記の作は比較的にわかりやすくおもしろいものと言える。

Ollie and Quentin
10月7日掲載分

比較的新しくGoComicsに掲載されるようになった作品のうちではこれがいちばん気に入っている。ガーフィールドのようにくっきり見やすいカラーリングと奥行きのある背景描写が特徴的。可愛らしいキャラクターデザインだけれども、こういうグロテスクなユーモアも頻出する。

Peanuts
9月30日掲載分

言うまでもなく再掲載もの。圧倒的な知名度のわりにそこまでおもしろくはないよと思っている。もっとも、僕がこれまで読んだのは長いピーナッツの歴史のほんの一部に過ぎないが。ルーシーがライナスやチャーリー・ブラウンに苛立ちを募らせたり、あるいはシュレーダーにつれなくされる内容のコミックが気に入っている。

Stone Soup
9月19日掲載分

姉妹の二世帯が入り混じって登場するので、実はいまだにそれぞれの家族構成や名前が覚えられない。地震による被害の残るハイチへ登場人物だけではなく自身も赴いたり、アメリカにおける女性の権利を定めた教育法修正案第九条へ言及したりといったように、この作者には何だか進歩派の活動家みたいな印象を受ける。それでも決してきれいごとを描いているわけではなく、例えば上記のコミックでは甥っ子に目を掛ける上の世代からの視点で描いた前日のコミックの翌日に、その甥っ子から悪気はないがちょっと酷な反応をもらうといったようなリアリズムをも持ち合わせている。イデオロギーと善意からはみ出る部分にこそおもしろさがある。

Viivi & Wagner
12月11日掲載分

フィンランドのコミックストリップ。GoComicsに掲載されるようになってからはすべて読んでいるが正直言ってあまりおもしろくない。初めの頃は作者の頭の中にオチをつけるという発想がないんじゃないかと疑ったくらいだ。上記の作品は珍しくいかにも漫画らしいナンセンスな落ちがついていて普通におもしろい漫画になっている。

Ziggy
8月6日掲載分

悪徳病院ネタ、悪徳銀行員ネタ、悪徳自動車整備工ネタ、口の悪いかごの鳥のネタなど、ほぼパターンが決まっているんだけれども、それなりにおもしろく読み続けている。主人公がぼーっとして悲観的でないことと、悪人がありえないくらいにずうずうしく平然と無茶な要求を突きつけてケロッとしているところがいいのかもしれない。