Garfield from the Trash Bin

- Garfield from the Trash Bin
- Author: Jim Davis
- Publisher: Ballantine Books
- Release: February 2010
- Size: 27.5cm x 21.6cm
- ISBN: 9780345518811
- Format: Softcover
- 128 pages
- $14.00
レビュー
30年以上にもわたって続いている有名な作品の没ネタを集めた本。本来の三コマの形をした漫画ばかりがぎっしり詰まっているわけではなく、風刺絵のようなカットやただのラフスケッチもかなりの分量を占めていて、総じてマニア向けのコレクターズアイテムに近い内容になっている。それでも、決して日の目を見ることのない際どいユーモアは貴重であり、見捨てがたい一冊だ。
Garfield は一般的には新聞に掲載されているコミックストリップということになるんだろうけれども、僕は新聞の紙面で見たことがないし、そもそもどこの新聞に載っているのかさえ知らない。しかし幸いなことに、 Gocomics.com で無料で読むことが出来る。僕が読み始めたのは去年の夏ごろからで、そこから今日までの分しか知らない。サイトでは1978年6月19日の最初のストリップから読めるようになっているけれども、とても全部を読む気はないし、その時間もない。だからこの本のレビューはその一年足らずに読んだ分との比較で書くことになる。続き物のストーリー漫画なら最初から読んで語らなければ意味がないけれども、基本的にどこから読んでも大して変わりのない断片的なコミックストリップならそれで構わないだろうと思う。
内容のうち、三コマのストリップ形式のものは気色悪かったり、グロテスクだったりするネタが圧倒的に多い。定番の一つである蜘蛛を叩き潰す類のグロテスクなネタとの違いは、現実にはありえないほどの身体的な誇張や、あるいはそのものずばりを視覚的に表現してしまうところにある。高校時代に鼻の穴に突っ込まれたコインが今になってもときどきくしゃみをした際に出てくるとか、二人三脚(three-legged race)で毎年優勝した従兄弟が実はパートナーなしで出場していたなどのギョッとするユーモアをさらっと言ってのけ、ジョンとガーフィールドのどちらをも大して驚かせずに済ませているところがこの作者のユーモアセンスの不気味なところだ。また、ガーフィールドの頭や手足がもげている様子をはっきりと絵に描いてしまっているネタがいくつもあることが不思議であり、作者の悪乗りを疑いたくなるところでもある。体の一部が欠損するネタで没を喰らったならば普通は許容限度を意識して二度と描かないだろうと思うんだが、何故か同様の没ネタがゴロゴロしている。
僕が一番気に入ってるのは、これからリズの家を訪ねてディナーを共にする予定のジョンがガーフィールドと会話を交わすエピソード。おそらく初めてリズの家に行くことになるジョンが交際の成否のために真剣な決意の程を表明したそのあとで、見送りざまにガーフィールドがつぶやいたセリフがこれ。
And don't forget to mark your territory!
いかにも猫らしい動物の習性になぞらえることによって露骨な語彙を避けてはいるけれども、それが婉曲的な表現になるどころか、むしろ下品になっていて傑作だ。あくまで没になったネタなんだけれども、ガーフィールドの性格を考慮すればこのくらいの軽口を叩くのが本来の姿であって、下ネタが一切出てこないコミックストリップのほうが不自然に思えてくる。
ページのレイアウトやデザインは文字通りゴミ箱から拾ってきたということがコンセプトになっている。皺が寄っていて折り目があり、ところどころコーヒーカップを置いた後のしみがついていたりするスケッチブックの紙片の実写画像が背景になっていて、その上にそれぞれのストリップやカットが荒っぽく配置されている。いかにも没ネタっぽい雰囲気を出そうとしているわけなんだけれども、本書を制作する上での付加的な配慮と言えるのはその程度でしかない。作者によるコメントもなければ、制作時期についての情報もない。ただ連載をまとめただけのトレードペーパーバックとは異なる特別な本であることを思うとちょっと寂しい。
この本は、ただおもしろい漫画を読むことしか期待していない僕のような読者にとってはあまりありがたみのない風刺画のようなカットも多くてページ数と判型の大きさの割に物足りない。それども、今後ブラウザで何年アクセスしつづけても決してお目にかかることのない類のネタが収録されていることを思えばやはり大切な一冊ということになる。
補足
本書とは関係ないけれども、レビューを書く合間にGocomics.comに掲載されているほかのコミックをいくつか読んでみた。タダとはいえ、ひとつひとつ見て廻ってたらいくら時間があっても足りないので今までガーフィールド以外には注意を払わなかったんだけれども、 Lio や Non Sequitur などなかなか面白く、これからは定期的に巡回したいと思った。