Nine Ways to Disappear

- Nine Ways to Disappear
- Author: Lilli Carré
- Publisher: Little Otsu
- Release: April 2009
- Size: 12.7cm x 13.3cm
- Format: Softcover
- ISBN: 9781934378175
- 192 pages
- $12.95
レビュー
人間関係の疎外感や物質的な喪失感などをモチーフにした九つの掌篇。童話のように教訓を引き出して理解したくなる内容の話が多いけれども、あまりにシュールレアリスム的な表現に満ちているために現実的な意味付けは空しく思える。それでもおよそ現実世界では体験し得ない奇妙な感覚だけは残って、そこが本書の売りだろうと思える。というか、その程度のことしか僕には言いようがない本だ。
直接的な関係はまったくないけれども、この漫画には漱石の夢十夜を思い出させるふしがある。一つには表現がシュールレアリスム的であること。もう一つには、読者の視点からはごく短い時間のように見える出来事が、当の登場人物にとっては膨大な時間の経過として体験されているという時間の表現があること。さらに何といっても向こうが十ならこっちは九で、たった一つしか離れていないということがある。自然数が無限に存在することを念頭に置けば、これは奇跡的な邂逅と言えるんじゃないだろうか。
どの話も物理的あるいは生物的な限界を無視した夢の中のような出来事に終始していて、直接にキャラクターの言動を肯定したり、または否定したりといった評価をするにはあまりにも荒唐無稽すぎる。ともすれば、とても読んでいられないほど荒唐無稽になりかねない話に一応の物語的な体裁を保たせることで緊張感を持ったまま読めるようになっている。