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Nicolas

Nicolas: Cover
  • Nicolas
  • Author: Pascal Girard
  • Publisher: Drawn & Quarterly
  • Release: December 2008
  • Size: 18.3cm x 13.2cm
  • Format: Softcover
  • ISBN: 9781897299715
  • 80 pages
  • $9.95

レビュー

ケベック人の著者によるデビュー作でフランス語からの英訳漫画。幼少時に弟を亡くした経験に基づき、著者がその後の自分の人生の中で弟の死をどのように受け止めてきたかということを綴った作品。これ以上ないというくらいに素朴で単純なスタイルでもって、いくらか内省的な視点から著者の折々の心情を寄せ集めている。

この作品は単に絵柄が素朴な落書き風のものであるということだけではなく、作者から読者への情報の提示の仕方において極端に簡素なスタイルが採られている。基本的に上下に分割されたページの二つのコマでもって一つのエピソードが描かれているが、時には見開き二ページを使うこともあり、さらに右のページの内容が次のページに及ぶこともある。にもかかわらず、それぞれのエピソードに標題を割り当てるということをしないので、エピソードの区分がどこにあるのか非常にわかりづらい。そもそもコマ枠を一切描かない上に場面の切り替えを告げる地の文による説明などもほとんどないので、読者は実際に読み進めて内容を理解するまで場面が切り替わったのかどうか、次のエピソードに移ったのかどうか判断するすべがない。初めて読む際にはかなり混乱させられる。

数々のエピソードによって描かれるのは、必ずしも悲しさやさびしさなどの本来予想されるような感情ばかりではない。子供ならではの無邪気さや暢気さから来る場違いな言動がユーモアをもたらし、時には興醒めにまで至ってしまうところにこそ著者の率直で取り繕うことのない姿勢が覗え、現実に肉親の死を受け入れるということ、さらには肉親の死を受け入れる自分自身を見つめ直すということのリアリティを感じさせる。とはいっても、ここに主人公として描かれている著者の生活は決して特別なものではなく、とりわけおもしろい出来事が起こるわけでもない。結局のところは、兄が弟の死の悲しみを何とか乗り越えて一人前に成長したという、ただそれだけの話だろうと問われれば「そうだ」と答えるほかない。その程度の内容と言うことも出来る。

Rating
6/10