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Little Nothings Vol. 1: The Curse of the Umbrella

Little Nothings Vol.1: The Curse of the Umbrella by Lewis Trondheim: Cover
  • Little Nothings Vol. 1: The Curse of the Umbrella
  • Author: Lewis Trondheim
  • Publisher: NBM/ComicsLit
  • Release: March 2008
  • Size: 22.7cm x 15.5cm
  • Format: Softcover
  • ISBN: 1561635235
  • 128 pages
  • $14.95

レビュー

Les petits riens の英訳版第1巻。現在も著者のブログで更新されているウェブ漫画をまとめて収録したもの。日常生活で経験したさまざまな出来事をそれぞれ1ページに収め、原則的に独立したエピソードを寄せ集めたものになっている。

この漫画の中に出てくる登場人物としての作者のいちばんの特徴は、本来は偶然に過ぎない現象や出来事をただの偶然で片付けることなく、ことさらそこに意味を見出そうとする傾向にある。その性癖がいくつものユーモラスなエピソードを生み出す元になっていて、決して奇妙でもドラマチックでもない漫画家の日常生活をもおもしろく見せている。偶然の不思議さはあっても、それ自体では取るに足りない物事に対してあれこれ想像を働かせるということはプロの漫画家らしい気質の現れとも言える。実際、作者は即興のユーモアでもって周りの人びとを笑わせる趣味があるようで、好んでおかしな振る舞いをする場面がたびたび見られる。しかし、場を沸かせるために意図的にひねり出されたものよりも、むしろ何気ない日常の瞬間に自然と作者の頭に浮かんだものにこそ独特のユーモアがある。というのは、作者のこの性癖によってしばしば空想が本人も思いも寄らない方向に及び、およそ理不尽で非現実的な因果関係を思い描くにまで至ってしまうからだ。

作者のもう一つの特徴は、自ら経験するさまざまな偶然の出来事についてその幸運と不運の割合にゼロサムゲームのようなバランスを期待してしまうということだ。幸運があまりにも続けば、良くないことがまだ何も起きないうちから不安をめぐらせる。不運が続けば、反動で幸運が訪れると信じ、いまだ不幸な境遇のさなかにもすでに楽観的な気分に浸ってしまう。この特徴は終盤になってから初めて散見されるものであって、全体の雑多なエピソードの数々にくらべればごくわずかの部分的なページを占めているに過ぎない。しかし、作者自身の経験した出来事の叙述が中心となるその他のエピソードと違って、ここでは出来事を解釈する作者の考え方そのものが中心となっている。したがって、あらゆる出来事は当事者にとって多かれ少なかれ幸運か不運とみなされるという考え方に拠るならば、本来は個別でバラバラのエピソード全体を終盤になって強引に総括してみせたと言えなくもない。実際、タイトルの The Curse of the Umbrella というのは、作者が旅先で天候不順の折に偶然に傘を拾ったという幸運な出来事とその後に続いた不運な出来事とのあいだにあるはずのない因果関係を見出そうとする視点から来ている。さらに、いちばん最後に収録されているエピソードではこの解釈から一歩先に進んだうえで締めくくっている。このおかげで、原則的に独立したエピソードの寄せ集めで一貫した話のすじのないこの漫画にきっちりとオチがついたかのような読後感をもたらしている。

偶然の出来事を尊重して意味を探る作者の性癖は、ともすればわざとらしく大げさなものと受け止められかねない。読者を笑わせるためのネタとしてことさらに誇張しているんじゃないかと疑われたかもしれないが、実際にはそのように感じさせる箇所はない。その根拠として、作者が漫画を描き始めるようになったきっかけがそもそも偶然の出会いに拠っているということが挙げられる。作者はその後の人生でたびたび拠り所としたに違いないその信条をひとことで言い表している。

When things fall together, I never fight it.

また、幸運と不運が釣り合いを取る形で交互にやってくるという考え方は、あまり大まじめに受け止めるとバカバカしいけれども、多くの読者の共感を催す範囲に留まっていると言っていいと思う。つまり、科学的に何の根拠もないことは言うまでもないことだけれども、それでも作者がそのように考えずにはいられないということを描いていることに要点がある。不運が続いた後に幸運を期待せずにはいられないということは根拠のない気休めかもしれないが、しかしそれは気休めを必要としているどうにもならない心情の現れと言える。同様に、幸運のあとに不運を予期したり、あるいは不運な出来事の原因をそれに先立って起こった幸運に求めたりするのも、精神衛生上の処方箋として作者にとってうまく作用したに違いない。その意味で、決して荒唐無稽な思い込みなどではなく、説得力のあるものとして読者に受け止めさせる描き方になっていると思える。

すべての登場人物は動物になぞらえて描かれており、作者もくちばしのある鳥の一種の顔立ちをしているけれども、このことは特に内容の上で必然性はない。ただ、単純な点や線や丸で作られている表情はこの漫画が多用するユーモアを表すにはじゅうぶんで、まったく不満を感じさせない。

Rating
7/10
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