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Locke & Key #1

Locke & Key #1: Cover
  • Locke & Key #1
  • Author: Joe Hill & Gabriel Rodriguez
  • Publisher: IDW Publishing
  • Release: February 2008
  • Size: 25.9cm x 16.5cm
  • Format: Softcover
  • 32 pages
  • $3.99

レビュー

これはホラー小説ハートシェイプト・ボックスの著者がシナリオを担当する漫画で、つい最近刊行が始まったばかりの新シリーズ。あらすじはある日思いも寄らぬ惨劇の犠牲となった家族が、住む場所を変えて再出発を計るというもの。ショッキングな惨劇それ自体は残酷さがよく演出されているものの、その出来事と、最も詳細に描写されている登場人物である長男のキャラクターと、そしてこの作品のジャンルを決めるはずのファンタジー的要素との三つのあいだの関連付けが不十分で作品の方向性がはっきりしていない。ストーリー漫画の第一話としてはお世辞にも上手くいっているとは言えない出来。

ストーリーはカリフォルニア州北部の小さな町メンドシーノに始まり、サンフランシスコ、そしてマサチューセッツ州の(おそらくは)架空の町ラブクラフトへと舞台を変えて進んでいく。中心的な登場人物である高校生の長男が自分の境遇に不満をこぼしてばかりいることからは、この漫画は怠惰な精神の克己が中心となる青春ものであるかのようにも思える。一家が悲惨な出来事に見舞われ、住む場所を変えて再出発を計るくだりからは、ともすれば興味本位に扱われかねない凶悪犯罪の被害者がどのようにして地域社会で上手く暮らしていくかというような、もっと社会性に重点を置いた作品のようにも思える。そして一家にとっての新天地ラブクラフトに移ってからは唐突にファンタジー的要素が導入され、また町の名前が名前だけに、まあおそらくはこの漫画はファンタジーものということになるんだろうなと予測される。一般的に言えば、もちろんこのような漫画が先に挙げたような青春もの、社会派ストーリー、ファンタジーなどといったように狭い一つのジャンルに区分されるとは限らない。それらを巧く混ぜ合わせたものになるかもしれない。ただ、この話はそういった好意的な期待を寄せるにはあまりにも粗雑に作られていて、作者がいちばん強調すべき作品の側面が曖昧になってしまっている。

主な登場人物はロック家の家族四人と親戚のダンカン、そして暴漢二人。ロック家の父親は暴漢に襲われて命を落としてしまう。母親もまた犠牲者なんだけれども惨劇を何とか生き延びる。長男のタイラーは主人公的な扱いを受けていて、自分の置かれている境遇への不満や他者への羨望など否定的な意味でおおいに若者らしい性格を与えられている。妹のキンジーは兄のこぼす愚痴にうんざりしており、辛辣なコメントを吐くことによって、実の兄の不甲斐なさを嘆く妹の、というよりはむしろ読者の率直な感情を代弁する立場にある。末っ子のボードはまだ幼く、自然の生き物に素朴な興味を示すあどけなさをもった子供として描かれている。ダンカンは子供たちにとって叔父であり、家族が新しく住むことになる屋敷の持ち主でもある。

人物の描写については不満の残るところが多い。作者は一家を襲った惨劇が長男タイラーにとってはかなり皮肉なものであることを意図して描いている。幼少の頃の住まいであるサンフランシスコの家に帰ることを切望していたタイラーは実際にその望みをかなえることが出来たんだけれども、その代償としてかけがえのないものを失ってしまったというように。さらに、彼と父親は決して良好な関係ではなかったと、少なくとも本人は思っている。したがって、たんに父親を亡くしたという衝撃以上の感情を描いてよさそうに思えるところを、作者はとくに深入りせずあっさり済ませてしまっている。アメリカの教育問題や若者の犯罪などについてよく知らない僕にとって興味深いのは、タイラーの父親がふたりの暴漢のガイダンス・カウンセラーを務めていたということだ。さすがにこの漫画に描かれているような凶悪犯罪が一般的だとは思わないが、アメリカ流のいわゆる御礼参りとして理解すべきなのかもしれない。つまり、偶発的な事件ではなく、社会的に意味するところの含みをもった現象と言えるのかもしれない。しかし、このことについて作者が特に突っ込んだ表現をしないのが残念だ。カウンセリングの際の回想のひとコマでも入れておけばだいぶ印象が違っていただろうにと思う。末っ子のボードは兄弟の中ではいちばん無難に、どこにでもいそうな子供として描かれているにもかかわらず、話の終盤になってから引越し先の屋敷の秘密を発見するという重要な役割を担わされている。この秘密というものがそれだけで作品のジャンルを引っ繰り返してしまうほどの神秘的で不可思議なものであるため、またその発見者がそれまでもっとも地味に描かれてきた末っ子であるため、ずいぶんちぐはぐした印象を受ける。例えば長男のタイラーが発見者であったならば、それまで彼に費やしてきた描写の積み重ねからして秘密に対してどんな態度を取るかということに読者の想像を掻き立てることが出来ただろう。しかし、末っ子が発見者というのはまるで油揚げをさらうトンビのようであり、作者が物語を途中で放棄して別の物語を始めてしまったに等しい唐突さがある。いったい作者は何をやりたいのかという疑問が湧いてくる。

この漫画の話のすじは時間と場所の異なる三つの場面を交錯させて叙述する形になっている。場面の切り替わりをスムーズに、またキャラクター描写の上で効果的になるよう印象的につなぐことについて工夫されていることがはっきりわかる。場面が替わり話者も替わる箇所で同じ言い回しをあえて重複させて読者の注意を引く際にもセリフが自然で無理がない。このことがこの漫画の中で最もよく出来ているところだといっていいと思う。

絵柄はかなり癖があってこのジャンルの漫画に最適とは言いがたい。人物の瞳の輝きが皆同じように処理されているため、個々の性格を反映させるうえで巧くいっていない。例えば、武器で人を襲うような凶悪な男でも目がキラキラしちゃっているというように。さらに瞳に限らず、物の表面の光沢の施し方が一様なのでどれも同じ質感に見えてしまう。娘のキンジーが目頭に涙を溜めた顔を描いているコマがあるんだけれども、瞳と涙と唇の下のピアスとが皆同じ物質で出来ているかのように見えてしまう。言ってみれば着色したマネキンのような……。

読者が続きを読むことを前提にしているかのような中途半端な出だしに驚かされたけれども、とりあえず作品の中に提示されたいろいろな要素でもって作者がこれから何をやりたいのかは見据えてみたいと思っている。

Rating
4/10
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これは海外の漫画について書いたkosame.orgのレビューのひとつで、2008年8月16日に公開されています。その他のコミックレビュー同じ年に書いた記事のアーカイブなどもご参照ください。

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