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Daybreak

Daybreak by Brian Ralph: Cover
  • Daybreak
  • Author: Brian Ralph
  • Publisher: Bodega Distribution
  • Release: November 2006
  • Size: 25.4cm x 19.1cm
  • Format: Softcover
  • 48 pages
  • $10.00

レビュー

戦争か何かの災害によって荒廃し、まともな秩序が失われてしまった世界で生きのびる数少ない人びとを描いた漫画。現在か近い未来のアメリカを想定しているらしいが、群をなして人を襲うモンスターのような生き物が跋扈しているというファンタジー風味もある。常に一人称の視点で描かれていて、ストーリーはその読者の視点に位置する人物が片腕の男と出会い、身の安全のためにしばし行動を共にするという単純なもの。まだ始まったばかりで特に強く惹きつける要素に乏しく、率直に言えば物足りない。

これは new bodega というブログで公開されている漫画を六分割のコマ割りでもって本にしたもの。奥付にはThe Dramaという雑誌にも掲載されたとあるが、そちらはもう休刊がきまっているようだ。 new bodega では何人かの漫画家が下書きやスケッチなどそれぞれの仕事を持ち寄って公開していて、この Daybreak は唯一の続きものとして連綿と更新されつづけている。詳しく比較したわけじゃないが公開されているものを丸っきりそのまま収録したわけではなく、テキストの一部には若干の修正が加えられている。まだWeb連載は続いててすでに本になった分も含めて読めるようになっている。

視点が読者の位置に完全に固定されていて、セリフも吐かなければ体の一部も見せることなく展開していくので、がどういったキャラクターなのかはっきりと知るすべがない。ただ、登場人物は片腕の男のほかにもう一人いてそいつのセリフからは、ひょっとしたらこの読者の視点にいる人物は意外な正体を隠しているのかもしれないとちょっと推測させるような描かれ方をしている。さらにこの読者視点の人物に対して、片腕の男は出会った当初からやけに親切で人見知りすることもなく接していることもあって、深読みするとより疑わしく思えてくる。ただ、明確にそうだとはっきり言える根拠もなく、単に著者が深く考えずに描いてるんじゃないかとも思える。この48ページだけでは何とも言えない。

視点が一人の人物に固定されているということは、その人間の目に映らないものは描かずにすむということでもあり、著者はその都合の良さを利用してある程度は成功していると思う。主役的立場の二人がモンスターに襲われ狭い場所に逃げ込んでから反撃に出る場面があるんだけれども、その際に視点が片腕の男に固定されて周囲が良く見えずスリルを煽るのはこういう割り切ったスタイルの漫画でなかったらわざとらしく感じられたかもしれない。

キャラクターデザインは撫で肩で肩幅の狭い、股のあいだを四角く抉ったような四肢が特徴的。角張った鼻やゴマ粒のような目も含めて、木を削りだして作った人形か何かを思わせる。登場人物たちが置かれている状況の深刻さの割に何か長閑で悠悠としているように思えるのはそのせいもあるだろうと思う。

あまりおもしろくはない漫画。

蛇足

作中、片腕の男が瓦礫の山に埋もれた食料品店の在庫の山を見つけて、その上で食べかけのスナック菓子の袋を放り投げつつ Clean up on aisle five! と叫ぶひとこまがある。何のジョークかと思って調べてたらまるであつらえたかのようなそのものずばりと言っていい質問と回答のやり取りを Ask MetaFilter で見つけて疑問が解消した。元ネタが何なのかということよりもそれを知らない人たちがどんな推測をするのかが大いに参考になった。背景には感性の違いというか、文化の違いが垣間見えておもしろい。インターネットって本当に便利ですねえ。

一人称の視点で描かれた漫画というと、大友克洋に訪問者という短編があってSOS大東京探検隊に収録されている。狭い部屋で二人きりという状況のため、必然的に視線が主人公に集中することになり、秘密を隠そうと焦りまくる様子が克明に描かれていて愉快なんだけれども、あれは感情を巧みに描き分ける大友克洋の画力があってこそ読める漫画だろうなと思う。ちなみにあとがきで著者自身は「失敗作」と評している。

Rating
5/10